Pinterest に追加される新たなショッピング機能
2022年3月11日、Pinterest は自社の広告イベント「Pinterest Presents」の中で、ショッピング関連の4つの新機能を発表しました。
参考リンク
具体的なアップデートは以下の4つになります。
Your Shop
「Your Shop」は Pinterest のユーザー(Pinner)ごとに、好みやスタイルに合わせてカスタマイズされたショッピングページを提供する機能です。Pinterest 内のクリエイターやブランドコンテンツが組み合わさって表示され、後述のチェックアウトを通じてアプリ内で購入まで完結することができます。
ユーザーごとの表示は「taste-driven algorithm(嗜好ドリブンのアルゴリズム)」によって生成されるそうです。これは具体的には Pinterest 上でのエンゲージメントや検索データから嗜好性を読み取って学習していくエンジンだとのこと。
現在はアメリカの一部ユーザーのみのベータ版で、2022年後半にはアメリカの全オーディエンスに提供開始、その後展開していく国を増やしていく予定です。
チェックアウト
Pinterest はこれまで、画像や動画が気に入ってその先で買い物などのアクションを起こす際に、リンク先の別サイトで決済を行う必要がありました。今回発表された「チェックアウト」は、Pinterest から他のサイトやアプリに遷移せずに、そのままショッピングが完結する機能です。
Pinterest のショッピング広告はハイブランドを中心に高い成果が出ています(※) が、「チェックアウト」の導入によって購買時のストレスが減ってくると、そのままコンバージョン率が上がっていくと想定されますので、両者の組み合わせが標準化してくるとブランド各社にとっては有力な選択肢になりうる可能性を秘めています。
※イベントではCartierが前年比で3.5倍のトランザクションを記録した、等の事例が紹介されていました
なお、「チェックアウト」のバックエンドは Shopify と連動しており、本機能自体もアメリカの一部の Shopifyマーチャント向けに試験的に導入されているそうです。
今後は他の EC プラットフォームとも連携を増やしていくと思われますが、こういう時に真っ先に連携先として選ばれるのは常に API が充実して疎結合しやすい Shopify です。改めてユニファイドコマースにおける「接続」重要性を証明している事例だと感じます。
ショッピングAPI
「チェックアウト」における Shopify の接続のしやすさと同じ意味で、Pinterest は 「ショッピング API」の提供を通じて他のプラットフォームとの連動を強化していくとのこと。
「ショッピング API」によってカタログの作成やアップロードがこれまでよりもシンプルになるため、チェックアウトと統合することで、自然と Pinterest 自身が買い物の目的地になっていくことを目指しているように見えます。
トレンドツール
Pinterest 上のトレンドや動向がわかる「Pinterest Trends」に新しい機能が追加されるようです。具体的には、リアルタイム検索データ、トレンドタイプの種類の追加、詳細なオーディエンスツール、ユーザーごとのレコメンド機能などが含まれるとのこと。
こちらも他の機能と同様に、2022年の後半にグローバル展開するとのことなので、日本でも使えるようになるかもしれません。楽しみですね。
インスピレーションから、意思決定へ
今回の一連の機能追加は「taste-based shopping(嗜好にもとづいたショッピング)」だと表現されています。
Pinterest はよく「Inspiration(インスピレーション)」という言葉を使いますが、ショッピング体験がインスピレーションに満ちていればきっと楽しい、という哲学をブラさないところに好感が持てますし、CMO の Andréa Mallard が
We’re doubling down on products and features to help move people from the insight phase of inspiration, into the decision phase.
ユーザーがインスピレーションの段階から意思決定の段階へと移行できるよう、製品や機能をより一層充実させていきます。
https://newsroom.pinterest.com/en/post/pinterest-hosted-second-annual-global-ads-summit-pinterest-presents
と語っているとおり、プラットフォームとしての価値であるインスピレーションを毀損せずに、ユーザー行動とプラットフォームビジネスの成長が連動するようにプロダクト開発をしているのだなと、リリースからも感じ取ることができます。
なお、当日の様子は以下のリンクから動画で見ることができますので、興味がある方はぜひ一度ご覧ください。
余談ですが、動画内ではプレゼンターが必ず「My pronouns are…(she/her, he/him)」と表明してから始めたり、画面右上に手話が同時展開されるなど、デザインや構成のみならず、プレゼンテーション全体がシームレスかつ現代的な文脈を強く意識した作りになっていると感じました。
こういった細部へのこだわりは、彼らが自らを「An online oasis(オンライン上のオアシス)」だと表現していることにも通じます。ノイズが多いほかのソーシャルプラットフォームとは一線を画する存在になることで、ユーザーのエンゲージメントを高め、それが結果として無理のないユーザー行動(ひいてはショッピング行動)につながっていくと考えていることが伝わってくる内容でした!