Shopify から「Linkpop」が登場。Link in bio はクリエイターエコノミーの主役になりうるのか

Shopify の Link in bio(リンクインバイオ)

2022年3月22日(日本時間:3月23日)、Shopify はウェブ上にクリエイターが自身のリンクコレクション(Link in bio:リンクインバイオ)を構築できるサービスを発表しました。

Linkpop は Linktree などに代表的されるいわゆるリンクインバイオツールで、他のソーシャルプラットフォームやページのリンクを一覧で表示でき、Shopify と接続することでクリエイターが Linkpop 経由で商品を販売できるようにするサービスです。

Shopify の純製ということもあり、Linkpop と Shopify とを接続することで、ユーザーは Linkpop の画面を離れることなく購入を完了することができます。動線をシームレスにすることで、クリエイターのマネタイズをサポートしていく姿勢が伺えます。

マーチャントから、クリエイターへ

Shopify は基本的にマーチャント(事業者)をプラットフォームのコアユーザーに設定していますが、Linkpop はクリエイター(個人)を対象とするサービスです。

アーティストやクリエイターを支援するツールやプラットフォーム自体は特に目新しいものではなく、すでに多くの類似サービスが先んじて世に出ていますし、2021年末には Google が Qaya をリリースしたように、検索や動画といった非常に強力な武器を持つメガプラットフォームも続々とリンクインバイオへ参入してきています。

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Linkpop には他のリンクインバイオツールと同様に、シンプルな管理画面や分析ツール等が最初から組み込まれています。取り急ぎサンプルページを作成してみた感想としては、ソーシャルアイデンティティを集約するために必要な機能は最初からひと通り揃っているように見受けられました。

Linkpopの画面イメージ

Linkpop が他のリンクインバイオツールと一線を画すポイントになるのは、やはり Shopify との接続でしょう。Linkpop は Shopify のアカウントがあるかどうかにかかわらず誰でも使うことができますが、Shopify マーチャントとして Linkpop と同期することで、ソーシャルコマースの入口として活用できるようになります。

言い方を変えれば、現時点ではコマース利用は Shopify マーチャントに限られていますし、Linkpop が果たす役割が「まだ専用の店舗をもたないクリエイターへ Shopify の裾野を広げていくこと」だとすると、今後も Linkpop は Shopify をプライマリのコマースエンジンとして採用するはずだと思われます。

ソーシャルコマースのポータル(玄関)

Shopify は、Google や Facebook といった他のプラットフォームと接続することでマーチャントの機能を拡張してきた歴史があります。リンクインバイオの分野においても、すでに2021年11月に最大手である Linktree との接続も表明しています。

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今回の発表は、これまでの他社との協調路線は維持しつつも、クリエイターエコノミーが主流化していく流れに対して、Linkpop によってその入口(玄関)を押さえにいくという狙いがあるように見えます。(ですので、パートナーの競合となりうるサービスでも構わない、ということなのかなと思います)

リンクインバイオはクリエイターからすると設定がかんたんゆえに比較的スイッチングコストが低いサービスだと言えますので、ある程度ソーシャル上の活動で収益が期待できるレベルのクリエイターであれば、おそらくどこかのタイミングで決済やコマースとの接続性に力点が移ってくるはずです。

そのときに、リンクバイオそのもののシェアが、ある程度自社の収益性と連動してくる、という流れが想像できます。そう考えると、コマースプラットフォームが個人のポータルであるリンクインバイオに参入するのは自然なことだと言えるでしょう。

NFTへの布石として

Shopify は2021年12月に、自社ブランドの NFT を発行してストアで販売したり、他のブランドの NFT を購入したりできる「NFT market」を発表しています。

Shopify Plus のマーチャントであれば暗号資産での決済も可能なので、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)をはじめとしたほとんどの種類のクリプトが利用可能です。

デジタル資産とクリエイターエコノミーの相性が良いことはここでわざわざ語るまでもないですが、仮に決済や販売が利用可能だったとして、流通自体はクリエイターがどのプラットフォームを利用しているかに依存します。

ソーシャルコマースでは企業ではなく個人が主役であり入口であると考えると、その入口をどこで担保するか、というのは、SNS や検索などの入口自体を持たない Shopify だからこその打ち手だといえるかなと思いました。(なお、シンプルなコマース体験としては Shop アプリがすでにその役割を担いつつあります)

余談ですが、Shopify 上では Linkpop は販売チャネルの1つとして扱われます。(Shoppable link なので当たり前といえば当たり前ですが)

こんな感じで並びます

今日のコマース / EC では、ソーシャル、検索、メール、チャット、アプリ、店舗や広告など、複数のチャネルを使ってユーザーと接触していますし、タッチポイントの数は今後も増え続けると考えられます。

その意味で、自社 EC も含めたあらゆるタッチポイントを「チャネル」として扱う Shopify の思想がそのままユーザーインターフェイスとして現れたのが「Linkpop」なのだと言えるかもしれません。今後の発展がますます楽しみです!