Shopifyアプリ「Google販売チャネル」の所有者がShopifyからGoogleに移行する 〜その意味と解説

2022年9月1日より、Shopifyアプリ「Google販売チャネル」の管理主体が、これまでの Shopify から Google へと変更になるようです。ヘルプにもすでに記載があり、「Google販売チャネル」アプリを利用している全世界のマーチャントにもメールで周知されているようで、筆者が管理している複数のストアにも案内がきていました。

参考: https://help.shopify.com/ja/manual/promoting-marketing/create-marketing/google

この変更は、2022年の5月に「Facebook販売チャネル」のオーナーシップがMetaに移行したことに続くものです。Shopify 主導で始めたオフィシャルアプリは、徐々に本来の場所に戻りつつあります。

ほとんどのエンドユーザーにとってアプリの管理主体の変更は影響がないように感じますが、Meta にせよ Google にせよ、変更によってマーチャントのユースケースに若干の変化が発生することもあり、少し厚めのアナウンスが行われているようです。以下で具体的に見ていきます。

ルック&フィールの改善

これまで利用してきた主な機能には変更はありませんが、ワークフローは合理化され、さらにシンプルになります。

Shopify メールより

マーチャントには上記のような案内がされていますが、具体的にはどういうことでしょうか。合理化されシンプルになるワークフローとは、おそらくアプリの管理画面と商品データフィードの連携のことを指しているのではないかと思います。

現在の「Google販売チャネル」は、Shopify のアプリ上に Google Merchant Center(以下:GMC)と同じスキーマを用意し、そこに各マーチャントの商品データを自動的に反映させたものを Content API 経由で GMC に同期させています。

つまりそれは、Google側にカラム追加や要素の変更(任意項目の必須化など)があった際はアプリ側のスキーマにアップデートの必要が生じますが、その責任はこれまでのところ Shopify にあった、ということです。アプリがプラットフォームの最新仕様に追いつくまでのタイムラグがあると、その間に対象のマーチャントすべてに広告が出ない等のネガティブな影響が出てしまうリスクがつきまといますが、そのリスクに対してこれまで Google はアプリの管理主体ではないため作用できなかった、ということになります。

今後はオーナーシップが Google に移り、Shopify を通じて Googleプロダクト(ショッピングなど)を利用してもらうためのインセンティブと責任がはっきりするため、これまでよりもアプリのアップデートはしやすくなるでしょう。おそらく今後はアプリの後継ヴァージョンが登場するなど、機能的なアップデートが行われると期待できます。

見つけやすさの改善

同期プロセスがよりスピーディかつスマートになるため、より簡単に多くの商品をGoogleに掲載できるようになります。商品は1か国だけに掲載されるのではなく、配送先の国すべてを対象に掲載されるようになります。

Shopify メールより

商品の「見つけやすさ」を上げるには幾つかの方法がありますが、上記の案内文を参考にすると、今回はおそらく「Google販売チャネル」アプリと GMC の同期プロセスの改善だと読めます。

頻度は明言されていませんが、Shopify上の「Google販売チャネル」アプリは Google との同期がリアルタイムではありません(1日に1回とのウワサあり)。そのため更新頻度の高いマーチャントや、セール前の一分一秒を争う状況下では同期プロセスが重要になります。オーナーシップの移行後はここにもメスを入れるよという予告ですね。

また、「配送先の国すべてを対象」については、2022年4月より GMC 側で送料 [shipping] 属性に国 [country] サブ属性の設定が必須になったことに合わせたアップデートではないかと考えられます。アプリ側の対応が遅いことで越境ECで審査落ちしてプロモーションできない、というケースが出ていたことも影響しているかもしれません。

参考リンク

 

余談ですが、同期プロセスが改善されると、フィードの自動更新時にあるあるだった「Googleの商品用クローラーによる情報取得とGMCのフィード更新とのあいだにタイムラグがあり、情報に差分ができてしまいエラーフラグが立つ」という問題も回避しやすくなるかもしれません。

Google はとにかく商品フィードにエラーが出やすい(それ自体は情報の精度という意味で喜ばしいことですが)ので、よくあるエラーについては以下のページを参考に解決していただくのがよいかもしれません。

参考リンク

 

P-MAXキャンペーンと、GMCの直接編集

2022年8月15日以降、Shopify Googleチャネルを新たにインストールするすべてのマーチャントは、パフォーマンスマックスキャンペーンを実施できるようになります。さらに、キャンペーンの作成と管理は、Googleチャネルではなく、Google Merchant Centerで行なうようになります。Google Merchant CenterにはGoogleチャネルからアクセスできるようになります。

https://help.shopify.com/ja/manual/promoting-marketing/create-marketing/google/google-performance-max

Eコマース関連の広告運用者であれば、Googleのスマートショッピングキャンペーン(以下:SSC)が2022年夏から自動的にP-MAXキャンペーンに統合されることはご存知かと思います。「Google販売チャネル」ではこれまでも SSC を推奨してきましたが、今回のアプリの管理移行で P-MAX キャンペーンも平仄を合わせることになりそうです。(なお、9月からは「Google販売チャネル」経由で生成した SSC も自動的に P-MAX キャンペーンへと自動更新されるとのこと)

P-MAX キャンペーンの作成および管理は「Google販売チャネル」上ではなく GMC 上で直接的に行うことになるとの記載があるため、Shopifyアプリとしての「Google販売チャネル」はシンプルなアップローダー的な役割になると考えてもよいかもしれません。

管理と編集が GMC に委ねられるということは、Shopify アプリにはアップローダーとしての制御レベルが問われることとイコールです。仮に現在と似たような水準であれば Shopify → Google 間の同期のたびに GMC が上書きされてしまうおそれがあるので、SKU が多いマーチャントほど補助フィードやフィードのルール整備が必須になりそうな予感がしています。

今後の機能向上への期待

Google販売チャネルアプリの管理主体の移行は、単なるオーナーシップの変更ではなく、今後の機能アップグレードを予感させるものでした。今後は「Shopify と Google が互いの機能改善についてお見合いしてしまう」という場面は減るはずですし、プラットフォーム間のコネクトアプリが継続的に機能向上しているかどうかは当該プラットフォーム間の相性と双方の成長可能性を測るリトマス試験紙になりうるため、個人的には経過観察していきたいポイントです。(それがひいてはマーチャントやカスタマーの利便性にもつながっていくはずですし)

私見ですが、大規模なマーチャントになればなるほど(アップローダーと化した)個別のコネクトアプリをメンテナンスするコストは大きくなっていくので、どこかのタイミングで各種の API に対応している統合管理アプリに移っていくほうがトータルコストが安くなる気がします。(「購買データ連動で拡張CVに自動対応する」みたいな裏技を使ってこなければ)

現代のマーケティングはより複雑化しているため、プラットフォームやツールベンダーは基本的にシンプル化を志向します。一方で、シンプルの名の下に触れるレバーが減れば減るほど、予算やリソースが少ない「持たざる者」が局地戦を戦っていくための創意工夫の難易度は上がっていくものです。本件はニュースとしては小粒でしたが、「何を自動化し、何を自動化しないか」を改めて考える必要がある、と痛感させられるリリースでした!