「ノーコードでコマースをつなぎなおすShopify Flow × TēPsセミナー」書き起こし

2022年12月9日、Shopifyとノーコードツールをテーマにしたオンラインイベント「ノーコードでコマースをつなぎなおすShopify Flow × TēPsセミナー」が開かれました。Shopifyエバンジェリストでもある株式会社フラクタの河野貴伸氏が進行を務め、ノーコードツール「TēPs」のマーケティング責任者をつとめる堤健一郎氏とShopify Flow活用を進める株式会社リワイアの加藤英也氏が、それぞれの特徴を踏まえながら解説。Shopify FlowとTēPsを軸に、コマースの現場の未来をよりよくするためにはどうすれば良いか、について掘り下げました。

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◆登壇者紹介

河野 貴伸 株式会社フラクタ 代表取締役

2000 年からフリーランスの CG クリエイター、作曲家、デザイナーとして活動。美容室やアパレルを専門にデジタルコミュニケーション設計、ブランティングを手がける。現在は「日本のブランド価値の総量を増やす」をミッションに、ブランドビジネス全体と D2C ブランドへの支援活動及びコマース業界全体の発展と Shopify の普及をメインに全国でセミナー及び執筆活動中。

堤 健一郎 テープス株式会社 マーケティング責任者

市場調査会社、CRM マーケティング支援会社を経て、ヤフー株式会社で Yahoo! ショッピングのマーケティング本部にて売上の分析やキャンペーン計画の作成、広告出稿などの業務を担当。2021 年 11 月より TēPs 事業のマーケティングを担当し、EC 事業者の業務自動化や効率化に関する情報発信を行う。

加藤 英也 株式会社リワイア 代表取締役

海外の大学を卒業後、株式会社サイバーエージェントにて営業からエンジニアに転向。広告の配信システムやターゲティングシステムの開発に従事。その後、三井物産子会社である株式会社 Legoliss 取締役として CDP・データ分析ビジネスの開発を担当。2020 年 12 月にフィードフォース子会社のリワイアへ参画(取締役)、2022 年 3 月より代表取締役(現任)。Shopify におけるコマーステック領域にてアプリ開発や各種インテグレーション事業を展開。


◆まずはじめに、Shopifyで利用できるノーコードツールについておさらいです

Shopify Flow

SaaSが実現できるEコマースのプラットフォームとして定着してきたShopify。ストアに合わせたカスタマイズが自由に行えることで、多くのマーチャントから支持を得ています。その特性を支える仕組みのひとつが、Shopify Flow。ノーコードで自動実行できるワークフローを組むことが可能です。ただ、Shopify Flowは現在、発生したイベントをきっかけに作動することが基本のため、時間による定期実行が苦手。その部分については、公式アップデートが待ち望まれています。

提供:Shopify

TēPs

オンラインストアの業務効率化をねらいとして、2021年にサービスがスタート。Amazon、楽天市場などのモールに出店するストアに向けて、バックヤード作業の連携や時間に合わせて行う作業を定期実行で自動化するワークフローを、ノーコードで組みあげる仕組みを提供しています。Shopifyとは2022年に連携を実現。Shopify向けのノーコード施策は、今後拡充予定です。

提供:テープス株式会社


TēPs×Shopify Flowの可能性は「研究中」

河野:TēPsとShopify Flowって、何か組み合わせの鉄板はあるのでしょうか。

堤:現在、加藤さんと研究を進めているところです。

加藤:TēPsは時間に合わせて定期実行ができるところが良いですね。Shopify Flowは何かが発生したタイミング、アクションが起点となるので、「深夜0時に顧客に通知する」みたいなことはなかなか難しいです。誕生日など、その日その時に顧客とコミュニケーションを取りたい場合に、TēPsでデータを抽出してShopify Flowでつなげることで、顧客に通知できるはず。コミュニケーションに組み込むかたちで、TēPsは使えると思います。

堤:良くも悪くも、TēPsのトリガーは時間のみなので、Shopify上で行う基本のワークフローは、Shopify Flowがベースである方が良いと思います。TēPsで全てをカバーしようとすると、どうしてもラグが発生してしまうので。ただ「1ヵ月フルフィルメントされていないものを通知する」といったことはShopify Flowではできないので、こうした時間を軸にした設計はTēPsが担えるはずです

河野:TēPsもShopify Flowも、それぞれ得意不得意があるわけですね。Shopify Flowも万能ではないので、お互いに不得意な部分を補完できて親和性が高い関係性といえます。逆に、Shopify FlowからTēPsへのトリガーはないんですよね。

加藤:そうですね。でも今後はできるようになってくると思います。TēPsは物流との接続が良いので、Shopifyで変更が加わったことを他のシステムに共有するとか、期待値は大きいです。CSVでやっていたことを自動化するだけで、ミスが減り安定感も出てくる気がします。

河野:TēPsは今、どのような連携が多いのでしょう。

堤:バックヤードの受注処理が多いです。Shopifyに限らずに言うと、楽天のスーパーセールに合わせて商品名を変える作業は、RMSだと深夜の手作業をせざるを得ないのですが、TēPsであれば自動化が可能です。Shopifyへの連携は今年の7月なので、他のサービスほどは手が行き届いていないところではあります。

河野:加藤さん的に効果が出やすいTēPsとShopify Flowの組み合わせ方はありますか?

加藤:Shopiy Flowは単発のアクションで動くことが多いので、合計金額とか、定期実行とか、その辺が苦手なんですよね。TēPsが入ればその辺りの通知をまとめてできると思います。オーダーが入ったらタグをつけて、一日が終わったときにタグだけ集計、とかも作れるはず。コードを書かずに毎日の集計ができたらとても良いですよね。

定期購入してくれた人が何人いて、何個以上の購入があって……というのをメタフィールドで管理して、TēPsで集計をまとめて日々の変化を確認する……なんていう組み合わせもアリではないでしょうか。

河野さん進行のもと、Shopifyとノーコードツールについて深掘り

自動化のカバー範囲はBtoBの現場にも

コメント:卸先への在庫共有と出荷実績(追跡番号)共有にTēPs利用予定です!BtoB要件でも使えそうだなと思ってます!

河野:BtoBでTēPsを使っているところはありますか?

堤:BtoBであるかは判断に迷いますが、よくあるケースは自社の倉庫で管理している商品と、メーカー発注の商品を混在して扱っているお店の利用です。メーカー発注の商品の場合、通常はいちいち連絡をかわす必要があったところを、スプレッドシートをお店とメーカーで共有して、注文があったらTēPsが自動で書き込みをする、というフローで使われています。

河野:コマースの現場で、BtoBの案件は増えてきている感触があります。ここをもう少し追求できれば、より充実しそうですよね。

加藤:卸先や取引先との連携、自動でメールが送れるようにできるはず。まとめた注文を一覧で送れたり、発注の管理もできたら面白いですよね。

堤:在庫が10を切ったら自動でメール送信とか、発注に必要なExcelがあれば、それも作成して先方のDropboxに格納するとか、お手伝いできることは色々あると思います。

ずらりと並ぶ、TēPsでできること

TēPsの連携先拡大は計画中

コメント:TēPsさんに質問です、Amazonや楽天などとの連携がされているのですが、今後連携を増やしていかれる予定のカート等はありますか?

堤:社内に、話題としては出ています。今後に期待していただければ……。

加藤:たくさん声があがれば優先度は上がるはず!

河野:TēPsって明確な競合はあるんですか?

堤:部分部分で競合はしているけれど、ガチンコでぶつかっているところはないのではないでしょうか。SaaSの中でもECに特化しているので、国内では少ないです。ただ単発の性能だと負ける部分はあります。特定の条件に合わせて伝票を分割する場合は、ネクストエンジンに特化したアプリの方が使いやすかったり。

河野:現状、TēPsはEC周りに強い、ということですね。

加藤:ECは、国内のサービスといかにつながっているかが大事ですよね。

河野:LINEやOPENLOGIとか。

堤:チャットワークも多いですね。

連携の希望は、TēPsのサービスサイトからリクエストできます。


TēPs、Shopify Flow、それぞれのハードル

河野:Shopifyのアプリの定期通販系と、TēPsは相性良さそうですよね。例えば、定期購入で回数によってランクが変わるとき、TēPsで会員ランクを補えれば良いのに、みたいな話は出てきそうです。TēPsに「こういうレシピでこういう業務軽減ができます!」みたいな、セットで使える例が増えるとうれしいです。

堤:TēPsへの問い合わせは最近、「入れたらなんかできそうだけど、どこから手をつけたらいいか分からない」というものが多く寄せられます。ノーコードの認知は広がってきたけれど、そもそもの課題が整理できなくて戸惑う方が増えてきた印象です。TēPsとしても「こうすると便利!」という、初心者パッケージを用意できたらいいな、と考えているんです。

河野:加えて、加藤さんみたいな人がTēPsのレシピ作って売れると良いですよね。

加藤:実際、そういうマーケットプレイスはありますよね。組み合わせを作る業者、みたいな。面白いし、色んな人が便利になるし、世界が広がるはず。

河野:TēPsだけで作るのは大変ですし。お客様、パートナー、みんなを巻き込んで作れると良いですよね。共通の敵は、無駄な時間。

加藤:お伝えすると「意外とこんなことできるんですね」と言われるのは、TēPsもShopify Flowも、どっちも共通。啓蒙?の仕組みがないんです。「できるかできないかがそもそも分からない」というフェーズにあります。

河野:Shopify Flowマスターに聞きたいのですが、Shopify Flowのだめなところはなんですか?

加藤:まず、英語。ここにハードルがあります。実はShopify Flowって分かりやすい仕組みなんですが、選択肢にあるたくさんの項目が、注文、顧客、プロダクト……全て英語表記。必要なものを探す段階で、みんな心が折れそうになっちゃうんですよね。その点、TēPsは感動しました。日本語で選べるの、まじか!と。あと、Shopify Flowでは今、定期実行ができないところが大きな課題でしょうか。条件の設定もどうすれば良いのか、僕自身もすごく悩みます。まだまだ発展途上の仕組みであると言えます。

河野:Shopify Flowの出来上がったワークフローが集まったマーケットプレイスみたいなもの、めちゃめちゃ切実に欲しいですね。今後出てきてくれたら……。

加藤:Shopifyに要望を出す事案ですね。

Shopify Flowのワークフロー作成画面も紹介

河野:最後にお伝えしたいことなどあれば、どうぞ。

堤:TēPsはフリープランが10月からスタートしました。まず一回アカウントを作ってみて、試してもらえると良いな、と思っています。活用方法の事例は、ブログで紹介しています。これを参考に、ノーコードツールを触ったことがない人、プログラミングをやったことない人にも、TēPsで自動化される楽しさを感じてもらえたら。技術的なことに触れてこなかった人ほど、感動があるはずです。まずは気軽に試してもらえるとうれしいです。

河野:プログラミング、日本人だと英語で書かれているところで抵抗を感じる人が多いと思います。TēPsで組むフローも、プログラミングのひとつ。日本語で分かりやすくしているだけ。管理画面から日本語で分かりやすいので、試してみることをお勧めします。ただ、触ってみると定期実行を組んでみたくなってしまう罠もあります……。

加藤:Shopify FlowやTēPsで自動化できることであれば、体験してみて欲しいです。「理想のストアを作るために、頑張ってカスタマイズしなきゃ!」の間の部分に、Shopify FlowやTēPsがあります。不安があったら、是非相談してみてください。