「Googleで購入」の決済手数料無料化の本当のねらいとは?

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決済手数料の無料化

2020年はあらゆる小売企業にとってたいへん忙しい年になりましたが、Eコマースに関わるプラットフォーム各社にとっても変革の時を迎えた年でした。

そのプラットフォームの主要な1社である Google が今年行った変革の中で、ひときわ大きなものに「無料商品リスティング」の世界展開があります。

PDF: shopping_free_listings.pdf

そして、その発表(2020年7月)と同タイミングに発表されたのが、「Googleで購入」の決済手数料の撤廃です。

これは、「Googleで購入(旧:ショッピングアクション)」を通じたトランザクションに対する決済手数料を販売事業者から請求しないというプログラムで、発表当時は招待制でしたが、現在は多くの事業者がこのプログラムにサインアップしているようです。※日本での展開は未定

ちなみに Facebookショップの手数料は 5%(8ドル未満の場合は40セント)、eBay は 10%(最大750ドル)、Amazon の小口セラーは1点あたり99セント(日本は1点あたり100円)+総額に対する販売手数料がかかります。

つまり Amazon をはじめ多くのプラットフォームでは一定以上の単価(と粗利)がないと利益を出すのが難しく、D2Cのような生産から販売までを担うブランド以外は成立するのが難しい構造になっています。

Googleの手数料無料化はここに風穴を開ける試みだと言えるでしょう。

共同戦線と、チャネル争奪戦

決済手数料の撤廃とセットで、Google は PayPal や Shopify のようなメジャーなサードパーティとの提携を強化しています。日本でも Shopify が Google との連携を表明していますね。

これは、コマースの巨人である Amazon、eBay、そしてコマースプラットフォームとしても脅威となっている Facebook/Instagram をはじめとしたソーシャルネットワークからの小売事業者のチャネル争奪戦がいよいよ世界的に広がってきたことを示す動きです。(Shopify や Paypal は中立国の立場でしょうが…)

Googleのコマース担当トップの Bill Ready は

With more products and stores available for discovery and the option to buy directly on Google or on a retailer’s site, shoppers will have more choice across the board.

“製品や店舗を見つける機会が増え、Google で直接購入したり、小売店のサイトで購入したりすることができるようになれば、買い物客はより多くの選択肢を手に入れることができるようになるでしょう”

と発言していますが、これは裏を返せば現状は選択肢に偏りがあるという表明でもあります。Amazon 等のライバルを意識し、独立店舗を後押しする意図がある発言だといえますね。

こっそり Amazonマーチャント向けに自動変換テーブルを提供しているのも、その証左ではないかと思います。

Amazon フィードの互換性

Merchant Center を初めて利用する場合は、Amazon で使用している形式の商品フィードを Merchant Center アカウントにアップロードできるようになりました(まだ利用できない場合は、近日中に利用できる予定です)。これらのフィード ファイルは、自動的に Merchant Center で機能するようにマッピングされます。Amazon フィードを使用できるのは、以下のような場合です。

・完全な商品データがあり、商品の作成や既存の商品の更新を行いたい。

・完全な商品情報がなく、Google のカタログとの商品の照合や在庫の更新を行いたい。

・すでにアップロードされている商品の価格と数量の更新データがある。

所得税

サポートされている決済サービスが所得税、TIN 確認、源泉徴収、1099 レポートを処理するため、移行完了後は Merchant Center アカウントでこの情報の入力や管理が不要になります。

販売者の基準

手数料の低減に伴い、2020 年 7 月 30 日以降、販売者基準のパフォーマンスが手数料率に影響することはありません。

国外の取引

米国以外の国で法人登記した販売者の場合、決済サービス プラットフォームのアカウントをリンクすると、米国の銀行口座が不要になります。

https://support.google.com/merchants/answer/9977875

※2021年6月9日 日本語ページができていたので更新

上記は Amazon 側の商品スキーマに対して Merchant Center 用にオートマッピングが提供されていることを示すもので、Amazonの利用者に Google を手間なく併用してもらうことを狙っています。

すべてはマーチャントセンターのために

手数料が無料化するのはショッピングアクション経由のものになりますので、広告かオーガニックかはさておき、目的は「販売事業者に Merchant Center を利用するインセンティブを与える」に集約されるでしょう。

Merchant Center にすべての情報を集めて、世界中の商品が集まるリアルタイムデータベースにするということが狙いだと思います。

ふだん我々が使っている検索エンジンも見方を変えれば「世界中のウェブサイトが登録されているデータベースにクエリを投げるための超簡単なSQL」だと理解できますが、マーチャントセンターはその商品版です。

Google はデータの集積がどのように情報化して利益を生んでいくのかを世界中のどのプレイヤーよりも理解していますので、Merchant Center に情報を集める構造をつくるために、今後もEコマース周りの進化を続けていくと思われます。

すでに2020年のホリデーシーズンも佳境に入ってきていますが、もはやシーズナリティに関係なく、2021年以降もプラットフォームの激しい進化は続くでしょう。Googleはその主要なプレイヤーの1つであることは間違いありませんので、引き続きウォッチしていきたいと思います!