日本時間の2024年2月1日にShopify Editions Winter ’24 が発表されました。さまざまな機能アップデートがありましたが、中でも「Shopify Subscriptions」の完全リリースは大きな話題となっています。
今回は、Shopify Subscriptionsについて、機能を一通り触ったうえでHideさんとMichikaが話してみました。
海外の大学を卒業後、株式会社サイバーエージェントにて営業からエンジニアに転向。広告の配信システムやターゲティングシステムの開発に従事。その後、三井物産子会社である株式会社 Legoliss 取締役として CDP・データ分析ビジネスの開発を担当。2020 年 12 月にフィードフォース子会社のリワイアへ参画(取締役)、2022 年 3 月より代表取締役(現任)。Shopify におけるコマーステック領域にてアプリ開発や各種インテグレーション事業を展開。
ついに公開! Shopifyでサブスクリプションを実現するアプリ「Shopify Subscriptions」
Michika:前回のShopify Editions(Summer’2023)でサブスクリプションの公式アプリ「Shopify Subscriptions」の登場が発表されています。当時は早期アクセス限定でしたが、半年後の今回、全ストアで使用できるようになりましたね。
Hide:はい、ついに出ましたね! サブスクリプション機能は、ずっと前からニーズがあったもののShopifyの機能としてはありませんでした。だからこそ、「やっと来てくれた」とうれしい気持ちでいっぱいです。
Michika:Shopify Subscriptionsはシンプルではありますが、サブスクリプションを実施するにあたり必要な機能は備わっているな、と感じました。触ってみた感想はいかがですか?
Hide:正直、想像以上でした。「惜しいな…」と思う部分がもっとあるかなと思っていたのですが、あまり見当たりません。しかも、無料で使えます。サブスクリプションするなら、まずは Shopify Subscriptionsを使えばよいだろうという印象です。
Michika:魅力的ですよね。サブスクリプションに関して、公式アプリのリリース以外に前回のShopify Editionsの情報から何かアップデートされたことはありますか?
Hide:まずは、自動ディスカウントです。Selling Plan APIによって、定期購入の商品に自動ディスカウントを適用できるようになりました。ディスカウントの作成時に、購入タイプをサブスクリプションにすることで決済時に自動でディスカウントされます。定期支払いで割引を使用する回数を指定することも可能です。
参照:Shopify.dev docs Subscription discounts
また、定期購入用に選択できる決済オプションが追加されました。現状、Shopifyペイメント、PayPalエクスプレス、Authorize.net、Adyen、Stripe(一部のみ利用可能)に加えて、Shop Pay、Apple Pay、Google Pay、PayPalなどの利用も実現しています。地域限定の決済方法を使用することはできないですが、今後使用可能な決済方法はどんどん増えていくと思っています。
Michika:ありがとうございます。こちらのアップデートもサブスクリプションの基本的な部分で、着実に実用性があるアプリに進化している印象があります。
「Shopify Subscriptions」でできることとは? 実際に使ってみた。
Michika:改めて整理したいのですが、Shopify Subscriptionsには具体的にどういった機能があるのでしょう?
Hide:大きくは以下の3点になります。
- サブスクリプションのプランを作成
- マーチャント側での契約管理
- お客様側での契約管理(新しい顧客アカウントのみ)
Michika:私も実際に使ってみたのですが、プランの作成方法は非常にシンプルで、商品に対してディスカウントと配達を設定して作成するんですよね。
Hide:はい。シンプルですが、結構細かい部分まで設定が可能です。配達頻度のオプションを作ることができたり、その頻度によってディスカウントを設定できたり…。ディスカウントの方法は割合オフか割引金額の他にも、一定料金に設定する選択もあります。
Michika:プランも複数作れるので、商品数が多いストア様でも複数の商品に適応できますね!
Michika:つづいて契約管理について。契約管理は、各商品のサブスクリプション注文ごとに作成され、詳細を開くと顧客情報や配送頻度、数回先の注文などの記載があります。エクスポートやインポートの機能もついていますね。
Hide:インポート機能があることで、すでにサブスクリプションを実施しているストアでも切り替えがしやすくなっていますね。
Michika:他カートからの移行も増えそうですね!
Hide:はい、その期待もあります。もっと言うと契約管理では、配送頻度や商品の数量、さらには商品自体も変更することも可能です。また、サブスクリプション契約の一時停止や再開、キャンセルもできるので、顧客から何か「変更したい」というご要望があった際に、再注文しなくても管理画面側で変えられます。
Michika:現在は契約の検索はできないので、変更したいと思ったときに探すのが大変そうです。今後できるようになれば便利そうだなと思いました。
Hide:そうですね! タグをつけて絞り込みもできたらうれしいですね。
Michika:管理画面から顧客情報や契約条件を変更できることが分かりました。これって、顧客側からの変更は難しいのでしょうか?
Hide:「新しいお客様アカウント」を利用している場合は、顧客でもアカウントページから変更可能です。配送先・決済方法の変更と、サブスクリプション契約の一時停止、再開、キャンセルを実施できます。
Michika:わざわざストアに問い合わせをしなくても、顧客のタイミングで変更できる方がユーザビリティが向上しますね!
有料アプリとの違いとは?切り替えるとしたらどのタイミングがベスト?
Michika:Shopify Subscriptionsを実際に使うイメージが湧いてきました!サブスクリプションを実施するならShopify Subscriptionsで十分なのではないかと感じています。
Hide:そうですね。とはいえ、やはり細かいカスタマイズができる部分については、有料のサブスクリプションアプリには敵わないなと思います。
Michika:細かいカスタマイズとは?
Hide:例えばストアの規模が大きくなっていくと、送料無料などの細かい割引の設定や、アカウントページのカスタマイズを検討すると思います。あとは、次回注文予定や、決済完了の通知など。このあたりは、まだShopify Subscriptionsではできないですね。
Michika:たしかに、やりたいことが多くなってくると物足りなくなりそうですね。
Hide:初めてサブスクリプションを実施するならShopify Subscriptionsでよいと思っています。利用料や手数料もかからないので、気軽に始められて、うまくいかなければ辞めることもできます。始めてみて、うまく軌道にのり、やりたいことが増えてきたら有料アプリを選択するかたちでもいいのではないでしょうか。
Michika:日本にはサブスクリプションアプリがすでにたくさん存在するので、切り替えるときも用途に合わせて選べますしね。有料アプリへ切り替える際のコツはありますか?
Hide:カスタマイズしたあとのオペレーションを検討してから切り替えることですかね。細かいカスタマイズをするとその分運用コストが上がってくるので、誰が何を担当して、どのような流れで実施するのか等を決めておくとスムーズに移行できるはずですし、現場の負担も減ると思います。
Shopify Subscriptions | 有料のサブスクリプションアプリ |
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利用料/手数料は無料 | 有料 ※価格設定は各アプリによる |
詳細なカスタマイズはできない | 送料無料等、細かい設定が実現可能 ※機能は各アプリによる |
初めてのサブスクリプションにおすすめ | 規模が大きくなってきたストアや、 実施したい施策が増えたストアにおすすめ |
「サブスクリプションをやろうと思うストアが増えればうれしい」今後のアップデートに期待
Michika:Hideさん的に、今後Shopify Subscriptionsに期待していることはありますか?
Hide:小さなアップデートが継続してほしいなと思います。すぐそこの話でいうと「顧客がキャンセルをする際に割引を提案する」というような機能は、すでにShopifyにそのためのAPIが公開されているので開発されるかな、と見ています。あとは、バンドル(セット)販売ですかね。
Michika:なるほど、商品バンドルを実現するアプリ「Shopify Bundle」もすでに公開されているので、このアプリを組み合わせる機能があると実現できそうですね!
Hide:そうですね。今後、Shopifyの技術アップデートに合わせて、連携できる機能がどんどん追加されていくといいな…と楽しみにしています。
Michika:個人的には、Shopify Subscriptionsの登場でサブスクリプションを実施するストアが増えてくれたらな、と感じています。
Hide:僕もそこが一番の期待ですね。もちろん新規でShopifyを使ってサブスクリプションも一緒に始めてもいいし、既存のストアが導入してもいいですし。このアプリをきっかけに、サブスクリプションに挑戦するマーチャントが増えてくるとうれしいですね。